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秘密中毒

第10章 初めて



あたしはうなじに山田くんの唇を感じながら、

なんとか言葉を発した。


「なに、言ってるの?……か、患者には手を出さないんじゃ…」

「もう治ってるから患者じゃない」


言いながら、あたしのシャツの裾から大きな手を滑り込ませ、脇腹に触れた。


「……っっ」

息がうまくできない。

医者としてじゃなく、彼があたしに触れてる。


「結婚、してるし…ダメだよ」

そうだよ…あたしにはあの人がいて…

山田くんが好きでもダメなんだ。



「カラダはダメって言ってない」

「あっ」


山田くんの指先がブラジャー越しに胸の先端をかすめて、あたしは身体を震わせた。


そうか…山田くんはあたしと遊ぶだけ。

結婚なんて関係なくて。

身体が気持ち良ければいいんだ。

『あとくされなさそうな女なら遊ばせてもらう』…って前に言ってた。

あたしは結婚してるから、山田くんにしてみたらちょうどいいのかもしれない。


あたしが、卓也さんに求めてたのと同じもの。


でもあたしは……

今は違って……


「ぁ…っ」


「エロい声…診察の時から思ってたけどな」


あたしの心臓は今にも壊れそうなのに、山田くんはそんなことを言う。

あたしは、「やだっ」ともがいてかすかな抵抗を試みる。


「やだじゃない。俺に一晩、ガマンさせた責任取ってもらわないと」




山田くんはそう言うと、出しっぱなしになっていた蛇口の水を止めて。


全身から力が抜けそうなあたしの手を強く引っ張って。


寝室に行ったんだ。


…………

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