テキストサイズ

秘密中毒

第10章 初めて



山田くんの目が、あたしの身体を見てる。

視線が熱くて、逃げたくなる。


あの頃は見たことのなかった、冷静さの中に欲望を滲ませた瞳。

あの頃は知らなかった、彼の唇の温度。

あの頃は……見てるだけで胸が痛くて。

話すだけで身体が熱くなった。

今は――――
触れられて……もっともっと欲しくなるんだ………


触れるかどうかのタッチで乳房をかすめる指に、あたしは悶える。もっと、もっと…

濡れた舌が乳首を捉えた時、小さく叫んでしまった。視界がにじむ。


あたし、なんていやらしくなっちゃったんだろ……

今のあたしは、この人に抱かれたくてしょうがない。山田くんなのに。

抱かれたい……山田くんが言った通りだ。

それはたぶん再会した瞬間から。



山田くんと目が合う。

と、少しだけ彼の目の色が変わって

「なんで泣いてる?」と言った。



「…え」

知らないうちに涙が流れていた。

しかも、気づいたからといってすぐには止まらなかった。




山田くんは小さくため息をついて、あたしの手首を離した。

「本当に嫌、ってことか……」とつぶやいて、ベッドの端に座る。


あたしの上にかかっていた体重がなくなり、

あたしは何か足りないような心細さを覚えた。


ちがう…嫌じゃないの。


やめないで。



あたしは自分に対して確かめるように、口を開いていた。


「山田くん、が………すきだったの…」

「……」

山田くんは無言のままだけれど動きを止め、聞いてくれているのがわかる。



「あたし…あの頃と変わっちゃった……と思ったら泣けてきちゃった。
山田くんが嫌なんじゃない。逆に気持ち良すぎて……ついていけないっていうか…」

ヒック、ヒックとしゃくりあげたり、ズルルと鼻をすすったりしながら、あたしは涙と一緒に気持ちを吐き出していた。


「なんであたしなの…?もっと楽しい遊び相手、いるでしょ…」


言いながら、(イヤだ…他の女の人に触れないで)って思っている自分がいる。

もう…ワケわかんない。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ