和服男子に恋されて
第2章 アプローチ
どれくらい時間が経ったのか分からないまま、弥子が濃厚な口づけに意識を朦朧とさせていると。
ようやく龍一は顔を離し、少しの間何か考え込むように黙り込んだまま弥子の顔を真剣に見つめると、穏やかに微笑んだ。
「……今日は、ここまでにしておきます」
そしてそのまま体を起こしベットから降り立つと、丁寧に和服を整え始める。
その光景に呆然としたまま、弥子はゆっくりと体を腰まで起こすしかなく。
無言のままローテーブルに置いていた眼鏡を掛ける龍一に、言葉を掛けることさえままならなかった。
静まり返った部屋に響く時計の針の音に耳を傾けながら、そっと龍一へ視線を向けるものの。
この日龍一が口を開くことは二度となく。
そんな沈黙に耐えきれず、弥子はおずおずと部屋を後にした。