和服男子に恋されて
第1章 告白
「私と付き合ってください。弥子(みこ)さん」
ある平屋建ての一軒家。
そこの書斎で、一人の男から弥子は唐突に抱き締められていた。
黒髪で和服を身に纏い、生真面目そうな眼鏡を掛け、物腰が柔らかい口調。
前髪は目に掛かり、襟足は和服の襟に付くぐらいの長さで、肌は色白く、細っそりと痩せた体。
そんないかにも物静かそうな男からスッポリと両腕で自分の体を包み込まれ、弥子は男の顔を見上げながら不思議そうに尋ねた。
「先生……? どうなさったんですか?」
「もう先生ではありませんよ。龍一と名前で呼んでください。私はあなたの恋人としてのパートナーになりたいんですから」
(恋人としてのパートナー……?)
愛しそうに自分を見つめる龍一の微笑みに、ぼーっとしていた弥子は急に顔を背け、たじろぐ。
「……困ります……急にそんな事を言われても……」
家事手伝いとして、小説家である龍一の下で働き始めて三年。
十八歳の頃から二十一歳になる今日まで、弥子は住込みのアルバイトとして龍一からこの一軒家に住まわせて貰っている。
それも恋愛感情なんてなく、仕事だけの関係だと思っていたからだというのに。
「私としては、突然のことではありません。弥子さんが18歳の頃から、あなたの事を一人の女性として愛していました。私と……付き合ってくれますか?」
龍一の言葉に、弥子はただ呆然とするだけだった。