素晴らしき世界
第15章 それはやっぱりあなたでした
【大野side】
ピピピッ……
俺は手探りでスマホを見つけ、
目覚ましのアラームを切る。
目を開けるといつもの風景。
「いないよな……」
ポカンと開くベッドの空間を見つめる。
いつの間にかベッドの端で
寝ることが癖になっていた。
隣で寝ていた人はもういない……
重い身体をベッドから起こして、
洗面所に向かう。
洗面台に置いていある歯ブラシに手を伸ばす。
その隣には、黄色い歯ブラシとコップ。
使っていた人はもういない……
それをぼんやりと見つめながら
歯磨きを済ませる。
そして、飲み物を取るために
冷蔵庫を開ける。
中は閑散としていた。
お前の中を満たしてくれた人はもういない……
飲み物と使われなくなった
調味料があるだけ。
適当に喉を潤し、
仕事に向かう準備をする。
クローゼットには
適当に畳んだ俺の服と
綺麗に畳まれたままの服。
袖を通してくれる人はもういない……
至る所にあの人がいた痕跡が残る。
それを見るたびに寂しさが襲う。
でも、捨てることはできない……
辛い思いをするのは、
楽しかった思い出がそこにあるから。
捨ててしまえば、
あの人との別れを意味するような気がして……
俺は、寝室に向かい
ベッドサイドチェストの引き出しを開ける。
すると、使用済みのローションが
コロリと引き出しの中を移動しようとするが、
未使用の避妊具の箱に止められる。
そして、一番下にあるファイルを取り出した。
そこには一枚の手紙が入っている。
手紙にはいくつもの
小さな丸いシワがある。
俺の涙が乾いた跡と、
あの人の涙が乾いた跡。
この手紙が唯一のあの人自身の痕跡……
引き出しを開ける度に思い出す
あの人の吐息……
あの人の頬を紅く染めた顔……
あの人の感じる声……
あの人の温もり……
あの人とひとつになった瞬間……
そして減らないローションと
開けることのない避妊具の箱が
容赦なく思い出から現実に呼び戻す。
俺は、引き出しにファイルを戻し
寝室の扉を閉める。
思い出が逃げていかないように……
家を出て仕事に向かう途中
俺は毎日、空を見上げる。
今日は雲ひとつない空……
俺にはあなたの姿は見えません。
空から俺の姿は見えていますか?
二宮さん……
ピピピッ……
俺は手探りでスマホを見つけ、
目覚ましのアラームを切る。
目を開けるといつもの風景。
「いないよな……」
ポカンと開くベッドの空間を見つめる。
いつの間にかベッドの端で
寝ることが癖になっていた。
隣で寝ていた人はもういない……
重い身体をベッドから起こして、
洗面所に向かう。
洗面台に置いていある歯ブラシに手を伸ばす。
その隣には、黄色い歯ブラシとコップ。
使っていた人はもういない……
それをぼんやりと見つめながら
歯磨きを済ませる。
そして、飲み物を取るために
冷蔵庫を開ける。
中は閑散としていた。
お前の中を満たしてくれた人はもういない……
飲み物と使われなくなった
調味料があるだけ。
適当に喉を潤し、
仕事に向かう準備をする。
クローゼットには
適当に畳んだ俺の服と
綺麗に畳まれたままの服。
袖を通してくれる人はもういない……
至る所にあの人がいた痕跡が残る。
それを見るたびに寂しさが襲う。
でも、捨てることはできない……
辛い思いをするのは、
楽しかった思い出がそこにあるから。
捨ててしまえば、
あの人との別れを意味するような気がして……
俺は、寝室に向かい
ベッドサイドチェストの引き出しを開ける。
すると、使用済みのローションが
コロリと引き出しの中を移動しようとするが、
未使用の避妊具の箱に止められる。
そして、一番下にあるファイルを取り出した。
そこには一枚の手紙が入っている。
手紙にはいくつもの
小さな丸いシワがある。
俺の涙が乾いた跡と、
あの人の涙が乾いた跡。
この手紙が唯一のあの人自身の痕跡……
引き出しを開ける度に思い出す
あの人の吐息……
あの人の頬を紅く染めた顔……
あの人の感じる声……
あの人の温もり……
あの人とひとつになった瞬間……
そして減らないローションと
開けることのない避妊具の箱が
容赦なく思い出から現実に呼び戻す。
俺は、引き出しにファイルを戻し
寝室の扉を閉める。
思い出が逃げていかないように……
家を出て仕事に向かう途中
俺は毎日、空を見上げる。
今日は雲ひとつない空……
俺にはあなたの姿は見えません。
空から俺の姿は見えていますか?
二宮さん……