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素晴らしき世界

第15章 それはやっぱりあなたでした

国「大野、今日は飲みに行けるか?」

鞄に荷物を入れ終え、
席を立った俺に声を掛ける
金曜日の上司。

「今日は無理ですよ……」

国「もしかして、これか?」

国分課長はニヤニヤしながら
顔の前に小指を立てた。

「まぁ……ねぇ」

国「甘い雰囲気出しやがって……
そんな奴は来るな!
おい、お前ら。飲みに行くぞー」

相変わらずだな……

「さて…俺も帰るか」

スマホを取り出し、LINEを送った。

【今から、帰ります】

するとすぐに通知音が鳴った。

【買い物して帰るので、
少しだけ遅くなります】

【わかった】

【じゃあ、あとで】

俺はスマホをポケットに入れて、
会社を後にした。

電車を降りて、家路を急ぐ。

家の前に着いたが、
部屋の明かりはついていなかった。


でも、不安は全くない。


和「智ぃー!」

俺の名を呼ぶ、愛しい人の声。


振り返ると、
両手にスーパーの袋を持って走って来た。

「持つよ」

和「ありがとう」

伸ばした手に
荷物をひとつ渡してくれた。

「今日、何作ってくれるの?」

和「智の大好物……」

「「カキフライ」」

2人、目を合わせて答えた。


好きな人はそばにいるって幸せだ。


そして、荷物を持っていない手を
ギュッと握った。

和「えっ?外ですよ?」

不安そうに俺を見つめた。

「暗いし、大丈夫。それに……」

和「それに?」

小首を傾げる和。


もう、可愛くて襲いたくなる。

我慢……我慢だ……俺。


「幸せを実感したいから」

下心を必死に抑えて、
スマートに答えた。

これも本音だけどね?

和がギュッと手を握り返してくれた。

和「実感しました?」

「もちろん」

和「じゃあ後で、
もっと俺に実感させて下さいね?」

和也の顔を見たら、
耳まで真っ赤にしていた。


我慢の限界を超えました……


和「えっ?ちょっと……」

和也の手をひっぱり部屋へ急いだ。

和也から荷物を奪って玄関に置き、
すぐさま抱きしめた。

「ねぇ、いい?シたい」

和「だって、ご飯…」

「後で」

和「だって時間…」

「時間なんていくらでもある」

和「…そうですね」

にっこりと微笑む和也の唇に
俺の唇を重ねた。


2人で歩む時間は始まったばかり……

ゆっくり時(いま)を刻もうね?


【end】

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