テキストサイズ

素晴らしき世界

第22章 好きの向こう側

「これと……これと、これ」

自分が書いたメモと
カゴの中身を照らし合わせていく。

「よし、完璧」

レジ前で最終確認をし、お会計をする。

袋を手に持つと、ずっしり感じる重み。


荷物を持つなんていつぶりだろう……


昔は外にも出なかったし、
買い物なんてコンビニくらい。

それ以外で必要なものは
ネットで買っていた。


けど今は、
一緒に外に出かけてくれる人がいる。

買った荷物を持ってくれる人がいる。


もしその人が傍にいなかったら、
確実に堕落したプライベートだった。


買った荷物を後部座席に置き、
車を発進させる。


目的地の店の駐車場に車を止めて、
店へと鼻孔をくすぐる甘い香り。

ショーケースに並ぶ数々のケーキが
店の照明に照らされてキラキラ光る。


一緒に来たら、
きっと目を輝かせて見てるだろうな……


どれも美味しそうだけど、
俺が食べたあのケーキに勝てるものはない。


俺もそのケーキに勝てるように
頑張りたかったけど年末は忙しく、
ネットで調べて、評判のお店を見つけた。

「いらっしゃいませ」

笑顔で店員さんが声をかけてくれる。

「予約していた二宮です」

「はい、少々お待ちください」

頭を下げると厨房へと向かった。

すぐに箱を持って店員さんが近づいてきて
スッと中身をスライドさせる。

「こちらでよろしかったですか?」

俺に向けられたのは
イチゴの小さなホールケーキ。

「はい」

「では、準備してまいりますので……」

大切にケーキを戻し、
持ち帰りの準備を始める。


「ありがとうございました」

入口の前で紙袋を受け取り、
車へと向かう。


ゆっくりと助手席に置くと、
優しくアクセルを踏んで車を発進させた。

いつもよりスピードを出さなかったので
自宅に帰るのに少しだけ時間がかかった。


そしてケーキをあらかじめスペースを
開けていた場所に入れ、買ってきた食材を
袋から取り出しテーブルに並べる

「よし、やるぞ!」

いつもは別の人が愛用しているエプロンを
着けると、腕捲りをして料理を開始した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ