素晴らしき世界
第4章 俺の帰る場所
【智side】
バイトを終えて家路を急ぐ。
正確に言えば俺の家ではない。
恋人とその家族が住む家。
俺の家は近所では有名な金持ち。
長男として生まれた俺は、
『跡取りになる』という
将来へのレールが敷かれていた。
俺はそのレールを文句を言わず
ただ歩き続けた。
両親からしてみれば聞き分けのいい子。
100点を取ってもそれが当たり前。
誉められたことは一度もない。
俺の中に『楽しい』という
感情は一切なかった。
毎日、学校で勉強して、
家に帰ったら習い事。
両親に言われた大学を受験し、合格。
そこで出会ったのが、
俺の恋人……櫻井翔。
いつも友達に囲まれて
楽しそうに笑ってた。
俺には眩しすぎる笑顔だった。
きっと俺とは真逆の
楽しい人生を歩んでいるんだろうと思った。
ある日、講義が始まるのを待っていると
翔「隣、空いてる?」
見上げると眩しい笑顔の彼がいた。
「うん」
彼は俺の隣に座った。
講義が始まり内容をノートに
記入していたら書き間違えた。
筆箱の中を探したが、
消しゴムが入っていなかった。
翔「良かったらどうぞ」
目の前に消しゴムが差し出された。
「あっ、ありがとう」
間違った場所を消し、
消ゴムを返そうとしたら
翔「いいよ、それあげるから」
「えっ、でも……」
翔「予備あるし、まだ1限目だから
このあとまた、困るよ?」
「じゃあ、遠慮なく……」
翔「その代わり、今度学食奢って」
「消しゴムより高くない?」
翔「バレたか……」
2人でクスクス笑っていたら
講師に怒られた。
その日のうちに連絡先を交換した。
それから、
大学内を一緒に過ごすことが増えた。
今までなかった『楽しい』という感情が
翔といるとどんどん溢れていった。
いつでも明るく笑顔が眩しかった
翔の笑顔が消えた日が1日だけあった。
その日もいつものように
2人で学食を食べていると
翔のスマホが鳴った。
翔「はい……わかりました。すぐ行きます」
何も言わず、席を立とうとする翔。
翔の顔面は蒼白でいつも笑顔は消えていた。
俺は咄嗟に腕を掴んだ。
「どうしたの?」
翔「母さんが……」
翔の目から涙が零れた。
バイトを終えて家路を急ぐ。
正確に言えば俺の家ではない。
恋人とその家族が住む家。
俺の家は近所では有名な金持ち。
長男として生まれた俺は、
『跡取りになる』という
将来へのレールが敷かれていた。
俺はそのレールを文句を言わず
ただ歩き続けた。
両親からしてみれば聞き分けのいい子。
100点を取ってもそれが当たり前。
誉められたことは一度もない。
俺の中に『楽しい』という
感情は一切なかった。
毎日、学校で勉強して、
家に帰ったら習い事。
両親に言われた大学を受験し、合格。
そこで出会ったのが、
俺の恋人……櫻井翔。
いつも友達に囲まれて
楽しそうに笑ってた。
俺には眩しすぎる笑顔だった。
きっと俺とは真逆の
楽しい人生を歩んでいるんだろうと思った。
ある日、講義が始まるのを待っていると
翔「隣、空いてる?」
見上げると眩しい笑顔の彼がいた。
「うん」
彼は俺の隣に座った。
講義が始まり内容をノートに
記入していたら書き間違えた。
筆箱の中を探したが、
消しゴムが入っていなかった。
翔「良かったらどうぞ」
目の前に消しゴムが差し出された。
「あっ、ありがとう」
間違った場所を消し、
消ゴムを返そうとしたら
翔「いいよ、それあげるから」
「えっ、でも……」
翔「予備あるし、まだ1限目だから
このあとまた、困るよ?」
「じゃあ、遠慮なく……」
翔「その代わり、今度学食奢って」
「消しゴムより高くない?」
翔「バレたか……」
2人でクスクス笑っていたら
講師に怒られた。
その日のうちに連絡先を交換した。
それから、
大学内を一緒に過ごすことが増えた。
今までなかった『楽しい』という感情が
翔といるとどんどん溢れていった。
いつでも明るく笑顔が眩しかった
翔の笑顔が消えた日が1日だけあった。
その日もいつものように
2人で学食を食べていると
翔のスマホが鳴った。
翔「はい……わかりました。すぐ行きます」
何も言わず、席を立とうとする翔。
翔の顔面は蒼白でいつも笑顔は消えていた。
俺は咄嗟に腕を掴んだ。
「どうしたの?」
翔「母さんが……」
翔の目から涙が零れた。