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素晴らしき世界

第4章 俺の帰る場所

俺は翔と一緒に連絡があった
病院へと向かった。

俺が付いていったって
何の役にも立たないけど
翔を1人にしてはいけないと思った。

病院に着くと、処置室に入っていった。

しばらくしたらドアが開き、
翔と先生と看護師が出てきた。

翔は深々と頭を下げていた。

暫くすると俺のところに来て

翔「ごめんね、付き合わせちゃって」

明らかに無理した笑顔。

翔「これから少し忙しくなるから
大学には行けそうにないや」

「何か手伝えることがあったら言って」

翔「ありがとう。今から、学校と保育園に
連絡しないといけなくって……」

「わかった」

翔は病院の外へと向かった。

俺は処置室の前で翔の帰りを待った。

暫くすると翔が帰ってきて

翔「まだ、いたの?もう、大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないでしょ?」

翔「えっ?」

「翔、泣いていいんだよ?
弟来たら泣けないでしょ?
俺の前では、泣いていいんだから」

翔「もう大丈夫だって……」

言葉とは裏腹に翔の目から涙が
ポロポロと溢れていった。

俺は思わず翔を抱きしめた。

翔は俺の胸で声を殺しながら泣いた。

暫くすると翔は俺から離れた。

翔「本当にもう大丈夫だから」

「わかった。
何かあったらいつでも連絡して」

翔「ありがとう」

俺は病院をあとにした。

それから一週間後、
『明日から大学に行く』と連絡があった。

久しぶりに会った顔は
いつもと同じ、眩しすぎる笑顔だった。

大学卒業まであと1年で、
学費はどうするのかと思って聞いてみたら

翔「母さんの生命保険とバイトで
何とか遣り繰りする。
大学卒業した方が少しでもいい就職先、
見つけられるでしょ?」

俺はいざとなったら
お金を貸そうと思っていた。

でも、翔は自分で何とかしようとしてる。

結局俺は、
親の決めたレールしか歩けないし、
親の助けがないと何もできない。

「よし、レールを外れてみるか!」

翔「えっ?なにいきなり?」

「翔のお陰で一歩、踏み出せそう」

翔「俺、何かした?」

「ナイショ」

大学は入った以上、卒業はした。

父の会社には入社しないと伝えると
『お前は息子でも何でもない』と
父に言われた。

それからは少しずつ家には帰らなくなり
翔の家に泊まる日が増えていった。

翔は何も聞かないで、
俺を迎え入れてくれた。

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