素晴らしき世界
第25章 勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第一試合】
「カズ……気持ちいい?」
「やっ……んんっ、ああっ」
『気持ちいい』
その言葉は身体の中で消滅する。
唯一素直なのは潤がもたらす快感で
漏れる俺の甘い声だけ。
勝手知ったる俺の身体。
激しい腰の動きは無いけれど、
いい所を的確に狙ってくる。
「締めすぎ……やばっ、イくっ!」
「まっ、ダメっ……んあっ!」
自身の先走りで濡れたモノを
扱き上げられ呆気なく潤の腹に熱を放った。
互いの呼吸を整える息遣いが部屋に響く。
「最近、もたないな……」
俺の隣にゴロンと寝転がる潤。
脱力した姿でさえ、カッコいい。
「歳なんじゃない?」
ようやく吐き出した言葉は
思っている事と正反対。
潤と付き合いだしてもう10年。
今更、素直になるなるなんて出来ない。
それに潤も天邪鬼な俺の正確を
熟知してるから大丈夫。
昔も今もそしてこれからも……
言葉にしなくても伝わってるよね?
「そうだよな。こんなんじゃカズを
満足させられないよな……」
ポツリと呟いた潤の言葉。
俺が思い描いた反応とは違っていた。
『言ったなー』って笑いながら、
じゃれてくるんじゃないかって思ってた。
でも潤は寂しそうにカーテンの隙間から
見える小さな満月を眺めていた。
違うよ?
そりゃ、昔みたいに激しいエッチはないよ?
でもそれは俺の身体の事を考えてでしょ?
それに俺は……
「お月様お願いっ!俺を若返らせて」
勢いよく起き上がると、
パチンと手を合わせて月に祈ってる。
「何、バカなことやってんの」
自分でも可愛くない言葉に嫌気がさす。
「そうだよな……」
満月を見つめる潤はどんな顔をしてる?
潤はカーテンを閉めると、
寝転ぶ俺の髪をフワッと撫でる。
俺を見つめる顔はいつもの優しい笑顔。
「タオル、取ってくるね?」
潤は寝室を出ていった。
ねぇ……知ってる?
満月はね、完了のエネルギーに満ちてるの。
だから手放したいことを
解放するのに適しているんだって。
ベットから起き上がり、
カーテンを少しだけ開け夜空を見上げた。
お月様……
素直になれない俺を解放できますか?
『その願い……叶えてあげますよ』