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素晴らしき世界

第25章 勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第一試合】

「ぅ……ん」

ゆっくりと目を開けると、
天使のような幼い寝顔が見える。


幼い……?


いつもと感想が違う。


【幼そう】とか……

【幼い感じ】なのに……

ゆっくりと瞬きをしてもう一度見つめる。


そっか、子どもだからか……

大人じゃないんだから幼いに決まってる。


「えっ?」

慌てて起き上がると、布団が捲れ上がた。


こっ、子ども!!!?


俺の隣には身体を丸めてスヤスヤ眠る男の子。

その顔に見覚えがあった。


10周年のライブの時、
みんなで持ち寄った幼い頃の写真。

そこにその姿があった。


「じゅっ……潤?」

「ぅん……」


いつもより高い声。


「おはよう……どうした?」

俺の顔に伸ばそうとした手は届かない。

「えっ?えっ?」

自分の手を引き戻すとマジマジと見つめる。

そして潤自身も声の異変に気づくと、
首に手を当てた。


そこにはきっと凹凸はない。


潤は慌てて起き上がると
姿見がある場所へ向かった。

履いていたズボンとパンツはスルリと脱げ落ち、
着ていたTシャツはだぼだぼTになっている。

「えぇぇぇぇぇぇ!!!」

甲高い叫び声が寝室に響き、
俺と鏡を交互に見つめる。

「これ、こども……だよね?」

自身の顔を指差す潤に俺は頷いた。

「まじで……」

テトテトという効果音が似合う足取りで、
ベッドに戻ってくると俺のすぐそばに座る。

「うそだろ?なんで……」


暫しの沈黙……

…………

………

……




「あっ!」

「えっ?どうしたの?」

潤が……幼い潤が頭を抱えてる。

「きのうのねがいごと、かなったんだ」


願い事?


『お月様お願いっ!俺を若返らせて』


いやいや、まさか……

だって願い事をするは新月の時。


昨日は満月だから、
願い事が叶うはずかない。


もし月の力だとしても……


「わかがえりすぎだよ」


心の中のツッコミと潤の言葉が重なった。


「それよりも……
どうしたらもとにもどるんだろう」

膝を抱えて丸まる潤の姿が不謹慎だけど……


めちゃくちゃ可愛かった。

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