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素晴らしき世界

第27章  勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第二試合】

「よし、今日はじゃんじゃん飲めよ?
じゃあ……カンパ~イ」

部長の音頭に続いて
『かんぱーい』という声や、
グラスがぶつかる音が聞こえる。

「おーちゃん、かんぱーい」

「おう、お疲れ!」

隣に座っている相葉ちゃんとグラスをぶつけ
キンキンに冷えたビールを流し込む。

「「くぅ~」」

おっさんみたいなリアクションに
一緒にクスクス笑った。

「俺らも歳、取ったのかな?」

「だって入社して5年だよ?
そりゃ、歳も取るでしょ」

グイッとビールを飲み干す相葉ちゃん。

「あの時はビールが美味いなんて
これっぽっちも思わなかった」

「そうだよな。あの時は先輩に
しこたまビール注がれて必死に飲んでた」

「「アイツらみないにな」」

俺たちの目線の先には、
グラスとビール瓶を持って
先輩に挨拶する松本と二宮。


2人は今年の新入社員。

俺は松本の指導係で、相葉ちゃんは二宮。


俺と相葉ちゃんは同期入社で
こうやって歓迎会に参加するのは
自分たちが新人の時以来だ。

もし俺も相葉ちゃんも指導係じゃなかったら、
参加はしてないだろう。

たまに2人で飲みに行ったりはしてたけど、
最近は忙しくてご無沙汰だった。

テーブルに並べられた刺身を
つまみに他愛のない話で盛り上がった。

「ヤバいな、二宮……顔真っ赤だ」

そんな中でも相葉ちゃんは
二宮の事を気にしていた。

会話中もチラチラ見てたからな……

「酒、弱いの?」

「あぁ」

スッとが立ち上がると、二宮の所へ向かった。

相葉ちゃんが来ると
ホッとした表情を見せる二宮。

相葉ちゃんがくしゃっと髪を撫でると、
赤かった顔が一層濃く染まる。

相葉ちゃんがいつもより
目尻に皺を寄せて優しく微笑んだ。


ん?

何だ……あの甘い雰囲気は?


そんな事を考えながら辺りを見回すと、
ビールをガンガン注がれている松本。

そしてそれを残さず飲み干していく。

妙なところで律儀というか頑固だから……

残すなんて出来ないんだろうな。


にしても、飲み過ぎじゃないか?

まぁ、顔も赤くないし……大丈夫か。


「マグロ……旨いな」

俺はひとり、刺身をつまみに
ビールをちびちびと飲み続けた。

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