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素晴らしき世界

第28章 勝手に挑戦、受けて立つ【交流戦第三試合】

3年が引退したあと、
二宮はキャプテンに指名された。

俺も部活モードから受験モード。

切り替えなきゃって思っても、
部活に燃え尽きたせいか
一向にやる気がでなかった。


けど、そんな俺に喝を入れてくれたのは……

やっぱり二宮だった。


グラウンドで誰よりも大きな声を出し、
誰よりも土にまみれながら動き回る。


二宮の背中はまた……大きくなっていた。



俺も負けていられない。



二宮は再び俺を奮い立たせてくれた。


「ありがとう」


勉強に忙しく、俺はその言葉を
二宮に伝えられないまま高校を卒業した。


そして再び夏が訪れた。


去年立っていたマウンドには二宮がいた。


俺は応援席でその姿を見つめる。


二宮はナイスピッチングだった。

点数も最小限に抑えた。

俺がいたときよりも、
スピードもコントロールも上がってた。


勝てる……

そう思っていたが一歩及ばず敗退した。



学校に戻ると部室から出てきた、
引退する後輩達に声をかけた。


けど、1番声をかけたいヤツが
いつまで経っても出てこない。


コンコン…

「はい」

ドアを開けるとタオルを首に巻き、
パイプ椅子に座る二宮の姿。

「お疲れ……頑張ったな」

二宮に近づくとポンと肩を叩いた。

「俺……ダメでした」

「そんなことない」

「俺は………ずっと追いかけてたです。
相葉先輩の背中を……だから頑張れたんです」

「二宮……」

「俺は相葉先輩がいないとダメなんです」


その言葉に俺はようやく気づいた。


「俺も二宮がいないとダメだ」

「えっ?」

驚いた顔で俺を見上げた。

「二宮が俺の背中を追いかけてくれたから……
隣にいたから頑張れた。ありがとう」


やっと感謝の言葉を伝えることが出来た。


「俺……相葉先輩が通っている大学に
行きたいんです!相葉先輩の背中をまた
追いかけたいんです」

「わかった、待ってる。ただし……」

「ただし?」

「合格したら追いかけるんじゃなくて、
隣にいて欲しい……ずっと」

その言葉に二宮は初めて俺に
満面の笑みを見せた。

「はい」

嬉しそうに返事をした唇に、
顔をゆっくり近づけ俺のそれを重ねた。


【end】

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