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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

久しぶりの自宅に帰ってきた。

ニノの家に帰る事は出来なかった。


俺はどんな顔して
ニノに会えばいいかわからなかった。



だって俺は恋人失格だから。



だから俺は、逃げたんだ。

今が一番辛いってわかってるのに……


「ゴホッ…」

少し埃っぽい部屋に咳が出た。


掃除……すっか。


ダウンを脱ぐと、着替えるのも忘れて
年末の大掃除並みに各部屋を綺麗にした。


一心不乱だった。

何も……考えたくなかった。


「終わった」

気がついたら暗かった外も、
だんだんと明るくなって部屋に光が射す。

「風呂、入ろう」

コンサートでもしたかのような汗を
綺麗に掃除した風呂で洗い流す。

気持ちよくてスッキリするはずなのに……


俺の心はどんどん沈んでいく。


でも身体は疲れていて、風呂から上がると
一目散に寝室に向かいベッドに倒れ込む。


昨日は温かかったベッドも今日は冷たい。


ニノ、ごめんね。

どこかで大丈夫だって思ってた。


俺と違って器用だし、何でもこなすから
心配いらないだろうなって……


ちゃんとニノを見てなかった。

ちゃんとそばにいなかった。


ニノは俺の家に転がり込んだ日から、
ずっとそばにいてくれた。


夜遅く帰ってきても
必ず起きててくれて俺を出迎えてくれた。

『お帰り』って……


俺の愚痴や悩みを聞いてくれた。

いや、ちゃんと聞きだしてくれた。


それが本当のそばにいるって事だって、
俺は一番感じていたのに……


それに俺は救われたんだろ?

何でそれが出来ないんだよっ!


綺麗になった枕カバーが濡れて、
一段と冷たさを感じた。

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