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素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間


「もう……十分でしょ?」

俺たちの会話に参加することなく、
ソファーに寝転がっていたリーダーが
ムクッと起き上がる。

「でも…っ」

まだ言い足りないのか食い下がる松潤。


でもこれ以上は……聞きたくない。


「ほら、今日は飲みに行くぞ!」

「えっ?」

突然の事に怒りを忘れて、
ポカンと口を開けている。

リーダーは鞄を持って立ち上がると、
松潤に近づくとくしゃっと髪を撫でた。

「翔ちゃん、松潤の鞄取って」

「ん、どーぞ。お疲れー」

「お疲れ、後はよろしくね」

「ちょっ……待って」

鞄を渡すと、リーダーは松潤の腕を掴み
引っ張りながら楽屋を後にした。


俺はただその光景を呆然と見ていた。


「相葉くん」

ポンポンと優しい肩の衝撃に、
思わず涙が零れ落ちそうになった。

「悪くないとは言わないよ?
やっぱり相葉くんが気がつくべきだった」

松潤と違って諭すように俺に話しかける。

「ニノはね、必死に隠そうとしてた。
相葉くんの前では完璧な演技。
さすがアカデミー俳優」

少しでも俺の気を紛らわそうと、
冗談交じりに話してくれる。

「でも俺たちの前では気が緩んだみたい。
ってか、松潤はメンバーの体調に敏感だから
気がついたってのもあるけど」


わかってる……

わかってるけど……


「何…で?」


この言葉以外に何が言えるんだろう……


どうして俺に偽りの姿を見せるの?

どうしてメンバーに気を許すの?


俺だってメンバーじゃん。

親友じゃん。


俺は……恋人じゃん。


「それは相葉くんだからだよ?」

さも当たり前のように言うけど……


何の根拠もない言葉に到底俺は、
納得することが出来なかった。

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