素晴らしき世界
第5章 家族ゲーム
偽りの初対面から数ヶ月……
春の訪れを告げる頃、
俺たちの計画が完了する日が来た。
リビングを覗くと、
いつもより少しお洒落をした母さんが
嬉しそうにカレンダーを捲っている。
今日の日付に赤の丸が付いている。
鼻歌なんか歌いながら
朝御飯を準備する母を尻目に
俺は洗面所に向かった。
「母さん、おはよう」
「潤、おはよう」
テーブルには俺の朝食のみ。
「今から、行くの?」
「うん、朝しか一緒に行ける時間なくて。
そのまま仕事に行くから、
戸締まり忘れないでね!」
「わかった」
さっきから、寝室とリビングを
世話しなく動く母さん。
俺は思わず笑ってしまった。
「潤、なに笑ってるのよ!」
だって、こんな面白い状況に
笑わない人がいたら会ってみたいよ……
「母さん、ちょっとは落ち着いたら?」
俺は立ち上がり
急須でお茶を入れてテーブルに置いた。
母さんは座ってゆっくりお茶を飲む。
「母さん、おめでとう」
今日はいくらだってお祝いの言葉を言うよ。
「……潤」
母の目にはみるみると涙が溜まっていく。
「今から幸せになる人が泣いてどうするの?」
「そうね……」
近くにあったティッシュを取り涙を拭く。
「母さん、幸せになってね」
今日だけは心から幸せを願う。
「ありがとう、潤」
「そろそろ時間じゃないの?」
「うん。じゃあ、いってきます」
笑顔で玄関へ向かった。
扉がしまる音がして
俺はカレンダーを見つめる。
入籍日は俺が決めた。
この日以外は絶対に許さない……
4月1日
母さんと大野智は入籍した。
結婚おめでとう。
でも、今日しか言わないからね……
だって今日は、
堂々と嘘をつける日だから。
春の訪れを告げる頃、
俺たちの計画が完了する日が来た。
リビングを覗くと、
いつもより少しお洒落をした母さんが
嬉しそうにカレンダーを捲っている。
今日の日付に赤の丸が付いている。
鼻歌なんか歌いながら
朝御飯を準備する母を尻目に
俺は洗面所に向かった。
「母さん、おはよう」
「潤、おはよう」
テーブルには俺の朝食のみ。
「今から、行くの?」
「うん、朝しか一緒に行ける時間なくて。
そのまま仕事に行くから、
戸締まり忘れないでね!」
「わかった」
さっきから、寝室とリビングを
世話しなく動く母さん。
俺は思わず笑ってしまった。
「潤、なに笑ってるのよ!」
だって、こんな面白い状況に
笑わない人がいたら会ってみたいよ……
「母さん、ちょっとは落ち着いたら?」
俺は立ち上がり
急須でお茶を入れてテーブルに置いた。
母さんは座ってゆっくりお茶を飲む。
「母さん、おめでとう」
今日はいくらだってお祝いの言葉を言うよ。
「……潤」
母の目にはみるみると涙が溜まっていく。
「今から幸せになる人が泣いてどうするの?」
「そうね……」
近くにあったティッシュを取り涙を拭く。
「母さん、幸せになってね」
今日だけは心から幸せを願う。
「ありがとう、潤」
「そろそろ時間じゃないの?」
「うん。じゃあ、いってきます」
笑顔で玄関へ向かった。
扉がしまる音がして
俺はカレンダーを見つめる。
入籍日は俺が決めた。
この日以外は絶対に許さない……
4月1日
母さんと大野智は入籍した。
結婚おめでとう。
でも、今日しか言わないからね……
だって今日は、
堂々と嘘をつける日だから。