テキストサイズ

素晴らしき世界

第30章 僕らの48日間

【カウントダウン終了後】


白組優勝で終わった紅白歌合戦。

勝利の余韻を味わう事なく、
ニノ以外の4人はロケバスに乗って
東京ドームへと向かう。

「今年は渋滞に巻き込まれずに済みそうだね」

松潤が紅白布を少し開け、
渋滞具合を確認する。

「良かったね」

リーダーはチラッと翔ちゃんを見た。

翔ちゃんは金の布に包まれた座椅子に
身体を預けて目を閉じている。


本当に良かった。

この状況で去年みたいに
走ることなんて出来ない。


マスコミには公表していないが
翔ちゃんはリハーサルでケガをした。

当たり所が悪くて、
ダンスするのも正直厳しかった。


でも紅白に穴をあける訳にはいかない。


何とかフォローしつつ無事に乗り切り、
残るはカウントダウン。

今年は俺と翔ちゃんは戌年だから、
ワンワンシックスとしての
パフォーマンスもある。


中継が繋がるまでは少しでも休んでほしい。


ピコーン…


俺のスマホのLINEの通知音。

中継が繋がるまでまた時間が合ったので
アプリをタッチして確認する。


あっ、ニノだ……


【翔ちゃん、大丈夫?】


簡潔な文章。

きっと出演者の挨拶の合間に送ったんだろう。


【大丈夫だけど、疲れてる】


ピコーン…


【みんなでフォローしてね】


【了解。ニノも最後の仕事、頑張って】


「中継、入りまーす」

スタッフから声がかかる。


俺はニノの既読を確認する事なく
マネージャーにスマホを渡した。

「翔くん、起きれる?」

松潤が優しく翔ちゃんの身体を揺らす。

「うん、大丈夫。ありがとう」

辛そうだけど笑顔を取り繕う翔ちゃん。


「中継まで5秒前……」


ちゃんと、フォローするから任せて。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ