素晴らしき世界
第30章 僕らの48日間
「ただいまー」
カウントダウン終了後、
元日恒例のお参りと祈祷を済ませ
久しぶりに自宅へと帰ってきた。
自宅なのに何か見慣れないな……
トボトボとリビングへと歩を進める。
あれから渋滞に巻き込まれる事なく、
無事に東京ドームに到着。
翔ちゃんがケガしている事は
出演者全員に伝わっていたので、
フォローしながらワンワンシックスも
問題なくこなす事が出来た。
去年は俺の顔がプリントされた
スカジャンを着て歌ったけど、
今年はニノの顔がプリントされたお面。
ステージどこを見渡しても、
ニノのお面だらけで気持ち悪かったけど……
歌いながらもあちこちから聞こえる、
『白組優勝おめでとう』という声援。
自分の事のように嬉しかったし、
ニノにも聞かせたかった。
俺はポケットから
スマホを取り出して画面をタップする。
連絡は……ないか。
出演者やスタッフへの挨拶も終わり、
自宅に帰ってる頃。
態度には出てなかったけど、
今までにないくらい緊張してたと思う。
きっと今頃、
疲れがドッときているに違いない。
ソファーとかで寝てなきゃいいけど……
電話……しよっかな?
でも、寝てたら起こしちゃうし……
プルルッ…プルルッ…
「うわっ!」
発信画面と睨めっこしてたら、
その本人から電話がかかってきて
驚きのあまりスマホを落とした。
慌てて拾うとすでに通話中の表示。
「もっ、もしもし、ニノ?」
「何か慌ただしいですね」
受話口からクスクス笑う声が漏れ聞こえる。
「今、家に……いますか?」
「うん、帰って来たとこ」
「良かった」
ピンポーン…
来客を告げる音が、インターフォンと
受話口から同時に聞こえた。