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素晴らしき世界

第31章 向かい合わせ

そんな不純な動機で俺は、
雅紀の告白にずっと横に振っていた首を縦に振った。

雅紀は振られてもずっと笑っていたのに……


初めて泣いたんだ。


でも俺はその涙を大袈裟だなって笑ってた。


その日から俺たちは親友から恋人になった。

でも俺にとっては肩書きが変わったという感覚で、
過ごす日々は今までの親友の時となんら変わらない。

だから俺が思った通り……楽だった。


おっぴろげに『雅紀と付き合っている』とは
言っていなかったので俺に告白するヤツはいた。

雅紀と付き合ったからって
俺の恋愛対象から女は消えていない。

だから身体だけの関係を持ったこともある。


でも結局、身体以外……

『彼氏』『彼女』というポジションを
求めてくるから面倒くさくなる。


その点、雅紀は『恋人』として俺を求めない。


でもそれなりに
雅紀とキスしたり身体を重ねる事は増えた。

だから自然と女に手を出す事は無くなった。

雅紀との関係も周囲にカミングアウトすると、
告白してきたりすり寄ってくる女も減った。

それでも『女』って武器を前面に出し、
誘惑してくるヤツはいたけど……

俺はそれに心を揺さぶられる事は無かった。


雅紀に勝る存在なんていなかった。


そして年月は経ち、
世間でいう『結婚適齢期』の年齢になった。

お互いの両親にも紹介をしていたから、
『早く孫が見たい』なんて言われる事もあった。

雅紀は照れくさそうに笑ってたけど、
俺は別に……って適当に聞き流してた。


今の現状に満足だった俺は
『結婚』の必要性を感じなかった。


でもある日、雅紀が言ったんだ。


『結婚して下さい!』って……


今の関係は変わらないだろうし、
雅紀が望むなら別にいいかと思って
『いいよ』って答えた。

そんな俺の軽い気持ちの返事に
いつも笑っていた雅紀が……



また、泣いたんだ。


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