テキストサイズ

素晴らしき世界

第31章 向かい合わせ

俺の言葉に箍が外れ、
堰を切ったように溢れる涙。

「同級生から友達になって、友達から親友になって、
親友から恋人になって、恋人から家族になった」

ポツリとポツリと思い出すように
話し始めた潤との馴れ初め。


そこに自分の馴れ初めが重なっていく。


俺と雅紀は幼馴染で、
物心ついた時から一緒にいた。

俺はずっと親友として雅紀を見ていたけど、
雅紀はずっと俺を恋愛対象として見ていた。

『好きだ』って何度も告白されたけど、
俺はその感情を理解する事は出来なかった。

でも雅紀は諦めず俺に何度もアタックした。

何度俺が雅紀の告白を受け流しても
ずっと笑って『好きだ』と言い続けた。

俺自身、男同士の恋愛や結婚に偏見はないし
『好きだ』と言われることに悪い気もしなかった。

でも、付き合う事は無かった。

やっぱり俺の恋愛対象は女で、
いくら告白されても雅紀は男で親友。

高校生になると彼女という存在への憧れや、
セックスへの興味もあって告白してきた
何人かと付き合ったりもした。

けど、長くは続かなかった。


束縛されたり、
ずっと一緒いなきゃいけない苦痛。

『好きだから』『付き合ってるから』って、
俺の行動を制限する意味がわからなかった。

それはきっとその言葉が
俺には該当していなかったから。


好きではなかったんだろう……


そして彼女と別れるとまた雅紀は
俺に『好きだ』と告白してきた。

それを何度か繰り返した頃、
俺はふと思ったんだ。

付き合ってた人に『好きだ』と
何度も言われて重たいなって思った。

でも雅紀にずーっと『好きだ』と
言われてるのにその感情が芽生えたことがない。

雅紀といると本当に気が楽で……

それはきっと一緒にいたから
俺のことを雅紀は全部わかっている。

もちろん俺も。

それなら誰かとわざわざ関係を築くより、
雅紀を選ぶのがいいんじゃないかって……

ストーリーメニュー

TOPTOPへ