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素晴らしき世界

第36章 怪我の功名

「もうっ、上手く出来ない!」

お玉をシンクに投げつけた。

さっきまでそれで炒めていた食材は
フライパンの中で見るも無惨な状態。


どうやったらこんな色になるんだ?

でも、見た目が悪いだけで味はいいかも。


「うげっ、マズッ!」

口に運んで一噛みした後、
すぐにそれをシンクに吐き捨てた。


もうこの行為を
何回繰り返しているだろう……


それに回を増す毎に不味くなるって
俺の料理の才能ZERO~♪だな。

って、全く笑えない。



絶対に美味しく出来ると思ってたのに悔しい。

綾野剛くんよりも……


ニノとはずっとスレ違いの日々が続いていた。

俺は映画、ドラマ撮影、特番、24時間テレビ。

ニノも映画の撮影があった。

ドラマがスタートする前に収録は終え、
番宣が終われば最終回まではスケジュールが
楽になるはずだったけど選挙が行われ、
バタバタしてしまった。

ようやく落ち着いて過ごせると思ったら、
ニノの映画公開で番宣が忙しくなる。

わかってはいたものの、
ニノに触れられない長い日々が
イライラを蓄積させた。

番宣内では仲睦まじく、
西島さんや綾野くんと笑ってる。

ニノはスッと懐に入り、
共演者と仲良くなることができる。

そこに恋愛感情がないとわかっていても、
やっぱり苛つくんだ。


相手はどうかなんてわかんないだろ?


それが爆発して昨日は
ひどい抱き方をしてしまった。


唇……怪我させたしな。


だから今日は謝らなくちゃと思って、
家に来てくれるニノにチャーハンを
ご馳走しようと思ったのに……

これじゃ、綾野くんの
チャーハンに勝てっこないや。

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