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素晴らしき世界

第39章 愛と浮気のチョコレートケーキ





『その弁当うまそうっすね。俺も……』

「あげねーよ」

加藤が卵焼きに箸を伸ばしてきたので、ペチンと手を叩いてやった。

『ケチですね』

そう言ってズズッとうどんを吸う。

「ケチで結構」

パクりと卵焼きを口に運んだ。


この弁当は和也が作ってくれた。


好きって思ったら飽きずにずっと食べてしまうタイプで、それを知った和也に『ずっと同じもの食べてたら、栄養が偏りますよ』って言われてしまった。

そして言われた次の日から毎朝、和也は俺に弁当を作ってくれるようになった。

さすがに松岡さん家に泊まるようになったら無理だろうなって思ったけど、和也は変わらず俺に弁当を作ってくれる。

だから今は毎朝、松岡さん家に弁当を取りに行ってから職場に向かう。


その時間が嬉しくて堪らない。


そこだけが唯一、2人で会える時間。


夜には必ず食堂に行って、和也が作ったまかないを食べる。

会えない訳じゃないけど、2人っきりになることは出来ない。

だからと言って、受け取る時に何かできる訳じゃない。


ギュッと抱きしめるのが限界。


その一瞬は満たされるけど、すぐに和也不足に陥ってしまう。


ホント俺、和也がいないとダメだわ。





『約束、覚えています?』

嬉しそうに問いかける加藤。

「毎日聞かれたら嫌でも忘れねーよ!ちゃんと飲みに行ってやる」

先週約束した通り、今日は仕事終わりに国分課長と加藤で飲みに行く。


食事も済ませる訳だから、和也に会いに行くことが出来ない。


あの時は了承したけど、まさかこんな事態に陥るとは思っていなかった。


そんな俺の気持ちを知るはずもない加藤は、忘れる事無く毎日嬉しそうに約束の確認をする。


その姿を見ていたら、少なからず俺も楽しみになって来ていた。


それに嬉しい理由がもうひとつ。


土曜日の夜に和也が家に一旦帰って来る。



松岡さんが用事があって、夜の試作品作りがなくなったらしい。


俺には嬉しすぎる予定変更だ。


『よっしゃー!午後も外回り頑張りましょうね』

食べ終わった食器を持って、嬉しそうに返却しに行く加藤の背中を見つめる。


よし、俺も頑張りますか!


最後に唐揚げをパクっと頬張り、弁当箱を片付けた。

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