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オムツン

第28章 二十八枚目

エスカレーターの横を通り抜けようとしたときのことだ。

マリは突然、私の手を引っ張って、並んだタンスの陰に身を隠した。

「…どうしたの?」

マリを見ると息を止めて、目を見開いていた。

まさに、驚愕、といった表情だった。

言い換えることができるなら、ビックリギョーテンくらいだろうか。

私がマリの視線を追うと、エスカレーターを降りてくる男女が目に留まった。

男が女の肩に手を回し、イチャつきながら降りてくる。

男は40半ば、ストライプ柄のスーツ姿にオールバック、銀縁メガネを掛けていた。

女は20前半、いかにも水商売風の濃い目の化粧に派手なウィッグをつけて、着飾っていた。

男女を見ていると、私達のいるフロアには用がなかったのか、そのまま下りエスカレーターを乗り継いで、下の階へ姿を消した。

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