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オムツン

第28章 二十八枚目

「どうしたの?あれ、誰?」

男女の背中を見送ってから、私はマリに聞いた。

マリの顔は青ざめて、握った私の手は震えていた。

「…大丈夫?」

「うん………」

「あの人、もしかして……」

「…うん………うん…………主人だったわ…」

まるで自分で確かめるかのように、マリは頷きながら答えた。

「…女と一緒にいたわ……」

「………そうだね」

マリが私を見る。

その表情は、驚きで、状況がまだよくわかっていない、と私に告げた。

「…何してたのかしら…」

ナニシテタノカシラ…だって?

この上には、映画館、バー、そしてホテルがある。

そんなこと、マリも知っているだろう。

さっきエレベーターに乗る前に、一緒にこのデパートの案内板を見たのだから。

ナニをしていたのかしら…だって?

そんなこと、マリもわかるだろう。

あの二人はそういう関係で、マリはそれがわからない年齢じゃないのだから。




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