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金魚鉢の金魚ー夫婦の在り方ー

第1章 金魚鉢の金魚のまま

 考え方も価値観も違う。そんなこと分かっていたはずなのに、翔ちゃんの些細な一言にイライラしてしまう。

 翔ちゃんが言ったわけじゃないけれど、私はまるで家政婦のようだ。掃除、洗濯、買い物、料理、洗い物。

 新しく始めたパート先では、エリハラ。店長に少し私が気に入られているからとオバサンたちの嫌がらせ。ミスしたら当然怒られる。完璧でも嫌味を言われる。

 結婚してから、一人の時に私が話しかけていた二匹の金魚は、夏の水質温度に耐え切られずに死んだ。

「また買えばいいよ」

 翔ちゃんは、そう言ったけれど、そういう問題じゃないんだよ。私が泣いて怒ると面倒くさそうに、

「好きにしろよ」

 と。私が相談しようとするといつも二言目には仕事で疲れてる。結局、私は変われない。今もまだ金魚鉢の中にいる金魚に過ぎなかった。

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