キョウダイ
第14章 陽だまりの優しさ
放課後は部活に参加すると明に宣言する。
それでも待っていると明は言ってたけど、待たなくていいと言った。
少し反省してるのか、元気がない様子の明につんけんした態度をとる。
久し振りに空手部に参加して体を動かしたい。
そう思って空手部に行ったんだ。
汗臭い中に顔を出して、びっくりする。
海斗が普通に部活に参加していた。
いやいや、骨折してんだよ、三角巾に吊るされてるじゃん、あの腕やばいんだって!
「ちょっと、海斗っ!」
つかつかと海斗の傍に行く。
骨折してない腕をつかんで、引っ張る。
「普通に部活に参加するなんて、バカじゃないの?てっきり、足腰のみとか、走るだけかと思っていたけど?」
「足腰だけしか使ってねぇよ」
面倒そうに髪をぐしゃぐしゃかき回している。
「いやいや、激しく動いてたでしょ?」
「大丈夫だって、悪いのは左腕だけだし、お前も分かってるだろ?」
はぁ?
キョトンと首をかしげる。
海斗の瞳が艶っぽくきらめく。
あたしの耳元に唇を寄せる。
「足腰が元気だから」
囁く声にぞくりとする。
「ばかっ」
叫ぶと笑いながら逃げて行く。
あたしも一緒に部活に参加しようとして、ふと足を止めた。
三年の校舎、ここからは離れた場所にあるけど、そこから、視線を感じた。
廊下で女の子二人と話をしているけど、それが明だとすぐに気付く。
その存在感で分かる。
背が高くスタイルもいい、なのに、どこか儚げで、頼りなくも見える。
あたしのすぐ傍をグランドじゃないのに、野球部がふざけて、ボールを打っていた。
大きく弧を描いたボールは三年の校舎のほうに飛んで行く。
「バカ!なにやってんだ!」
「わっ!やっべ〜!」
ガッシャーン!
派手な音をたてて、ボールが窓ガラスにあたる。
廊下にいる明達とは少し距離がある。
怪我するほどの被害でもない。
それなのに、明は急に胸を押さえて、ふっとあたしの視界から消えた。
……えっ?
気付いたらあたしは走り出していた。