キョウダイ
第21章 残りの人生
あたしの背中が急激に熱く震えた。
胸が熱くなる。
声だけで、分かる。
気配だけで、愛しい人の声。
忘れる事もない、ずっと待ち望んだ、たった一人の人…………。
「うん、僕、この辺に住んでいるんだ、お兄ちゃんはだあれ?」
奏ちゃんがジャングルジムの上にいる人に、笑顔で話している。
ジャングルジムにいる人はにこにこ笑いながら、奏ちゃんに、聞いていた。
「…………俺が分からない?」
あたしは、ゆっくり、ジャングルジムに登って、二人がいる場所に近付く。
「分かるよ………明…………奏ちゃんの……パパだよ」
久し振りに見る明の顔色は良くて、儚げな印象はない。
それどころか、日焼けして、逞しくなったように思えて、それが嬉しくて涙が流れた。
その胸に、奏ちゃんも一緒に巻き込んで、抱きついた。
「危ないな、今度は君が、俺を突き落とすつもりなの?」
「うるさいよ、そんなに鍛えるほど、長く向こうに居なくてもいいじ ゃない」
「やあ、これはどうせなら、やつれた姿じゃなく、格好良く、再会したいと思って」
「心配させて……っ、バカでしょっ……」
「………ごめん、でも何とか間に合ったのかな?もう少し遅かったら、また、あいつらのどっちかに、取られるとこだったね」
「……ママ?僕のパパなの?
これから、ずっと一緒にいられるの?」
あたしの胸に抱きしめた奏ちゃんが、呟く。
明の腕が、あたしと奏ちゃんを一緒に抱き寄せた。
「俺がパパだよ、これからはずっと一緒だ。
俺の残りの人生全てをかけて、二人共幸せにするから……覚悟してよ」
「………っ、明っ……っ」
嬉しくて涙が流れて、口から嗚咽が漏れるのに。
泣き崩れてみっともない、あたしの顔をじっと見つめられて、キスをされる。
最初は軽く、確認するように甘く。
それからは、ふう、と深く息をつくように、舌を絡められて、隣で奏ちゃんがいるのも構わずに、熱く舌を絡めて、再会を味わった。
幻じゃない。
夢でもない。
現実の明と、幸せなキスを交わす。
永遠の誓いを乗せて………。