キョウダイ
第17章 絡みあう糸
「八つ当たりしないでくれる?男の嫉妬ってめんどくさっ」
周りが騒がしい。
あたしはいつの間にか、明の傍でうたた寝していたんだった。
その傍で海斗と柊斗が揉めてるのも気づかないくらいに熟睡していた。
暖かくてふわふわしている。
幸せな気分で目を覚ました。
いつもの悪夢を見る事もなかった。
目を開けたら目の前に明の端正な顔立ちがあった。
長い睫毛。
少し大きめな目元。
子供の時は一緒にお昼寝もした。
こうして見ると、記憶の中にある奏ちゃんに似ている。
じっと見ていると、胸が締め付けられる。
綺麗な肌。
暖かい体温。
石鹸の香り。
形のいい唇。
この唇に何度かキスをされた事を思いだす。
どくん、どくん。
明の心臓の音に安心して、泣きそうになる。
奏にそっくりな明が、確かに生きている。
生きる事がつまらないと言っていた明。
ここにこうして存在してるだけで、すごいことなんだと思えた。
どうしたら、生きる事が楽しいことだと思うんだろ?
そんな事、誰にも分からないんじゃないかな?
どうしてなのか分からない。
気がついたらあたしは、明の唇に自分の唇をそっと重ね合わせた。
ただ唇を重ね合わせただけ。
唇に感じる確かな体温に、胸が暖かくなる。
だけど、すぐに我に返った。
はっとして、唇を押さえて、慌てて部屋を出た。
ドキドキする胸を押さえて。
どうして?
自分が分からない。