キョウダイ
第18章 育ての親
「綺麗になったね、葵」
色気のあるセクシーな瞳。
端整な顔立ち。
センスのいい、高そうなスーツに身を包んで、ピシリと隙のない身のこなし。
見た目は40代くらいの素敵な男の人。
あたしのお父さん、育ての親なんだけど、50歳は過ぎてる筈なのに全然見えない。
金曜日。
学校が終わってから急にお父さんから連絡が入った。
『仕事でたまたま近くに来たから葵に会いたい』
びっくりして慌てるあたし。
『母さんとは会いたくないから内緒で会いたい、話がしたい』
お父さんとお母さんが離婚して、3年以上も会ってないのに。
『キョウダイにも内緒で大事な話があるんだ』
食事に行くと言うから、慌ててシックなワンピースに着替えて、家の前までお父さんの外車が迎えに来てくれた。
白くて大きめなベンツかな?
緊張しながら乗って、車に揺られて一時間くらい。
なんか距離あるなあ……。
ぐったり疲れて高級そうなホテルに入って、エレベーターで高い階で下りて、やっと食事の出来る場所に連れて来られた。
「もう高校生か。
彼氏とかいるんだろうね?」
う〜ん。
曖昧に笑って誤魔化す。
自分でも分からない状況でどうしたらいいか分からないし。
へたに何も言えない。
「皆元気かな?」
「元気だよ、お母さんは相変わらずお仕事バリバリだし。
悠ちゃんは大学の勉強大変そうだし。
海斗は部活ばかりだし。
柊ちゃんはモデルのバイト頑張ってるみたいだし」
「葵は?
つらい事はないかい?
相変わらず家の事と勉強の両立でお前は別にやりたい事はないのかい?」
やりたい事?
う〜ん……。
「たまに縫い物してなんか作ったりしてるし、パッチワークキルトとか、大きめなの作ったりしたんだよ?
あとはパン作りにはまったりもしたし、でもお母さんが家政婦さんを雇うって言ってたよ?」