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キョウダイ

第18章 育ての親





「行ってくるってまさかお前?」

気が短くて行動力がある海斗をいつも羨ましく、頼もしく感じる時もあるけど。

「決まってるだろ、悠斗のとこだよ」

切れ長の瞳がぎらりと光る。

ああ、ばかだ。

こいつ。

筋肉バカなとこがあるから……。

しかもなんで悠ちゃんって呼ばないわけだよ?

海斗の中で悠ちゃんが敵認定になった瞬間だった。

俺は半ば呆れて髪をくしゃっと掴んでしまう。

困った時に昔からやってしまう俺の癖。

そりゃあね。

本当なら俺だって今すぐでも葵を連れ戻しに行きたいよ。

だけど相手は悠ちゃんだよ。

悠ちゃんが勝手に葵を拐った訳じゃない筈だし、きっと何かがあった筈だ。

そこを悠ちゃんが上手い事フォローしたんだろうし。

大人で計算して動く悠ちゃんの事だから、無理矢理葵をどうこうする事はないだろうけど。

きっと何かあった。

弱ったあいつの心に入りこみ、優しく自分のテリトリーに取り込む事くらいはやってのけるだろう。

そこからは逃がさない筈だ、決して。

ゾクリとする。

キョウダイだから分かる。

欲しいモノ、やりたい事、全てを自分のモノにする。

その為の努力も惜しまない、味方も増やして計算して行動する。

優しそうな笑顔の裏でえげつない事も平気でするし。

結婚するとか言ったら母さんは大喜びするだろう。

俺達にも入り込めないように手を打つ筈だ。

まずい、まずいよ。

葵、何があったんだ?

「野暮な事しないの、今はやめときなさい」

ぴしゃりと母さんが溜め息をついて、海斗を軽く睨む。

「何でだよ?」

「あのねえ…あんた分かんないの?あたしがそこまで説明しなきゃいけないのかしら?」

「なんだよ……」

イラついた鋭い目で母さんを睨んでる。

「あの子と悠ちゃんの性格からして、何か訳がある筈よ、葵は家に帰りたくないと思う理由があるのかもしれない、最近何だか悩んでるみたいだったし」

「……!」

「あんた、何か、心あたりでもあるわけ?」

はっとしたような海斗の表情を見逃さない母さん。

その瞳がキラリと光る。

家に帰りたくない理由。

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