
Sinful thread
第1章 居候
───そして今。
あたしは、葵のマンションの前にいる。
今日のこの時間にあたしが来るということは葵も知っている。確実に部屋の中にいるはずだ。
緊張、してる。
インターホンを押そうとする指が、プルプル震えるなんて……
こんなアニメみたいな事態があたしの体に起こるとは。
でも、こんなとこにいつまでもいたって仕方がない。
勇気を出して、ボタンの上に置いた指を押し込んだ。
「……はい」
一週間ぶりに聞く葵の声に、一気に心拍数が増す。
「あっ葵、の、希美……だけど……」
声も上擦ってしまい、スムーズに出てこない。
「うん。部屋の鍵も開いてるから。入ってきて」
一人で慌てふためくあたしをよそに、あっさりと鍵の開く音がして、インターホンは切れた。
