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Sinful thread

第1章 居候



葵の部屋の階まで上がり、部屋のドアノブを握ると、確かになんの抵抗もなくドアは開いた。


鍵をかけてキチンと靴を揃え、恐る恐る廊下を進む。

高まる自分の心拍数とは裏腹に、玄関に入った瞬間から漂ういつもの葵の香りが、すごく心地いい。


「し、失礼します……」


か細い声でそう言いながら、リビングのドアを開けた。


「あ、いらっしゃい」


部屋のソファに座る葵に、真っ先に目が行く。

一週間ぶりに会う葵。
……何度も会っているのに、今でも慣れない。
見惚れるほど綺麗だ。


「お、邪魔します……」


……初めて入る葵の部屋。まだ、現実味がない。

どこにいたらいいのかわからず、部屋に敷かれたラグの端にちょこんと座った。


「なに、希美。緊張してんの?」


距離をとって座ってしまったあたしを、葵がバカにするようにフッと笑う。

でも、見透かされてる。
葵の顔も、付いてるテレビの音さえも、あたしの目にまともに入ってこないくらいには、緊張してる……。


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