
Sinful thread
第6章 色情
「─────っ」
音にはならないため息が、ただ虚無感だけに包まれたこの部屋に、やけに大きく響いた。
……気がした。
───男って、こんなに本能に弱い生き物だったか?
男が……じゃないな。
“俺が”、弱いだけだ。
どれだけ強い“本能”にでさえ、打ち勝てるだけの“理性”を、俺が持っていればよかっただけの話だ。
そしたら……、誰も傷つけることはなかった。
希美も。
そして──────。
寝息を立てながら、こちらを向いて眠る顔を、じっと見つめた。
なに……やってるんだろうな。
「……芽依」
自分の耳にさえ届かないような声でそっと呟いて、前髪に触れる。
軽く目にかかったその髪を掻き分けると、安心しきったような芽依の顔が露わになる。
……疲れたのかな。
睫毛に綺麗に縁取られた瞼を、起きないように指でなぞって、その上にそっと、唇を重ねた。
