テキストサイズ

旅は続くよ

第2章 一緒に朝ごはん 雅紀編

N「ごっそさん」

先に食べ終わったニノが手を合わせて

それから自分の食器を片づける


A「流しに入れといて。後で俺が洗うから」

N「いいよ、どうせヒマしてんだから。それよりアンタ、まだ時間ある?」

A「ん?あとチョット位なら」

N「コーヒー飲も。淹れたげるから」


コポコポと静かな音と

香ばしい薫りが2人だけの空間に流れる


知ってるよ

これはニノの“お礼”でしょ?

俺はニノと食べたくて勝手に待ってただけなのに

この家に来たばかりのニノを

俺が気遣ったと思ってんでしょ?


ホントは違うのにね

気遣う気持ちが全く無かったワケじゃないけど

そんなんじゃないんだ

だって、俺はただ

好きな人と2人で朝食を食べたかっただけ

その機会を逃す程バカじゃないだけ


はい、と差し出されるカップ

ニノの笑顔ごと受け取った


A「…濃ぉい~。そういやニノって濃い目だったね」

N「薄いのなんか飲めるか。アメリカ人じゃあるまいし」

A「あ、アメリカンってそういう意味?」

N「違うわ、バカ。アメリカ人に謝れ」

A「クフフ、何だよ。自分で言ったくせに~」


捻くれた言葉なのに

ニノが言うと何故か小気味良く響く

それがいつも楽しくって

ニノが笑ってくれる度

体温も気分も上がっていくばかりで

N「…アンタさ、幾らなんでもノンビリし過ぎじゃない?」

A「あ、やっべ!!」

時間なんて、あっという間に過ぎちゃうんだ


食器を慌てて片付けようとする俺に

N「いいって。俺がやっとくから」

A「でも」

N「早く行きな。遅刻なんかさせたら俺が潤くんに怒られちゃう」

ワザとふざけた言い方

ニノ流の優しさはいつも温かくって、

胸がフンワリするよ



A「じゃ、いってきまーす!」

N「は~い。しっかり稼いできてね~」


見送りなんて無くても

ニノの声が俺の背中を押す

今日1日元気に働ける気がして

外への1歩を力強く踏み出した



ストーリーメニュー

TOPTOPへ