アスタリスク【ARS.O】
第1章 今年いちばん寒い夜
ジーンズのポケットに入れたスマホの振動で目が覚めた。
「……。」
俺はコタツで毛布をかぶって寝ていた。
そうだ。
昨夜はコンビニの前でアキに拾われて、部屋に連れてこられたんだっけ。
スマホを見ると、早朝6時のアラームがバイブで震えていた。
「行かなくちゃ…。」
俺はのそのそと起き上がった。
コタツのすぐ横のベッドでは、アキが掛け布団一枚にくるまって猫のように縮こまって寝ていた。
俺にはほかほかのコタツと毛布を使わせて。
「お前が凍え死ぬぞ。」
俺は、毛布をアキの掛け布団の上から掛けた。
アキはすやすやと眠っている。
アキの黒髪をそっとなでた。
「ありがと…。」
俺は、静かに部屋を出た。
マンションの階段を下りて道に出ると、空に白い月が出ていた。
俺は、タクシーを拾うために大通りに向かった。