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アスタリスク【ARS.O】

第5章 幸せな食卓

「私ね、学校の先生になりたかったの。私みたいに生活の苦しい子でもしっかり勉強できるような環境を作りたかった。」

俺と潤は、アキの話をしんみりと聞いた。

俺も潤も大して生活に困ったことはなく、好きな仕事をして今は人より裕福な暮らしができている。

もちろん、仕事は頑張っているけど。

アキみたいに家庭環境で道を閉ざされることはなかった。

アキの話が終わる頃、もう終電が気になる時間になっていた。

「駅まで送るよ。」

俺はアキにベンチコートを着せた。

潤は、「ちょっと待って」と言うと、寝室に入って何やら持ってきた。

「アキちゃん、よかったらこれあげるよ。」

潤はアキの首にストールを巻いて手袋をはめた。

藤色にラメの入ったきれいなストールだった。

「こ、これカシミアじゃない…。こんなものもらう義理がない!」

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