テキストサイズ

☆ラリマーの扉☆

第8章 理想郷の扉~青空の下、契約を結ぶ

「契約の日が───…ついに来たさ
ぼくは嬉しくて、舌なめずりをしちゃうよ」

桜叉麗斗……

「っ……」

「長い長い悠久の契約が、結ばれる…
待っていた分の…契約が!」

狂うように喜ぶ、過去の人間────…

「麗斗…どうしたの?」

「あぁいけない、つい興奮しちゃった
ぼくは…君を待ってただけさ
この止まった時が動くまで…
氷の結晶が溶けるまでに……」

……どういうこと

「君には力があるんだよ…
自分は気づいていなくても」

青空の果て

彼の髪がふわっと揺れた───…

そのひらっと見える瞳からは

なにかを見透かしていたような気がする

「……っ」 

彼の怖さが募るシノ。

「その力は世界に光をもたらす…
ユートピアではなく、現実をも…」

何も答えられない
なんて言えばいいのよ……

「……えっ…」

「いつか気づく日が来る
どうかその日まで……

……ふふ。ぼくとお別れだ

それと…契約。お忘れなきよう」

麗斗は悪魔のように微笑み
ふわっと消えていった────…


シノは青空の果て

1人残される。

造られた青空をひたすら眺めて

「……っ、力なんてないわ…」

涙を流す。

ユートピアなんて、つくりもの…

どうせこんな青い海の海水なんて…
味すらしないはず。

確かめるつもりで
海水をペロリとなめた。

「……っ」

衝撃がわずかにあるしょっぱさが
舌に伝わる。

そうか…

ここは、もうひとつの世界だわ、きっと…

ユートピアなんかじゃなく
本当の現実だと思う……

また再び空を見上げて涙を流す。

麗斗にもらった鍵を掲げるシノ。

「……契約に従い、がんばります」

祈りを込め、鍵を自身のお守りとした。

絶対…がんばるから。

『理想郷の扉~青空の下、契約を結ぶ』

               終

ストーリーメニュー

TOPTOPへ