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プリンス×プリンセス

第21章 底無し沼

「ただいま~」

玄関の扉を開くと、軽快な声が家の中を駆け巡った。

「おかえりなさい」

艶やかな黒髪を1つにまとめた女性が現れ、にっこりと微笑む。

「暑かったでしょ?これ飲んで休憩しましょう?」

女性が差し出したグラスを見て、少年はエメラルドのような緑色の瞳を輝かせた。

「やったぁ!!ママ、ありがとう!!」

一口飲んで、その美味しさにとろけそうな笑みを浮かべる。

少年の笑みに母親が目を細めると、グラスの中の氷がカランと涼やかな音を立てて…

「ママ?」

急に辺りが暗くなった。

手にしたグラスの中身がどんどん減っていき…

よく見れば、グラス自体が氷で出来ていて、熱でどんどん解けていく。

「あ!!」

最後には、水が気化するように、跡形もなく無くなってしまった。

「…ママ、どこ?」

少年は周りを見回した。

だけど、彼の最愛の母親の姿はどこにもない。

「ママ!!」

泣きじゃくって母親を捜す。

「ママ!!どこ!?」

扉を開け、名前を叫び、走り回って…

「ママ!!出てきてよ!!ママ!!!!」

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