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プリンス×プリンセス

第21章 底無し沼

夢を見た。

あの夢を見るのは久し振りだ。

ネクタイを締めて、鏡に写る自分にチェックを入れる。

よし。いつも通り、乱れはない。

部屋を出て、いつも通り業務をこなしていく。

今の生活に不満はない。

ただ…

すれ違いざまに、メイド頭から声をかけられた。

「あ、ジューク様、よろしいですか?」

「はい、何でしょう?」

内容はディオチェスター様のスケジュール。

それに合わせて、寝具の交換をするらしい。

「ではそのように」

「はい、お願いします」

メイド頭は恭しく頭を下げると、自分の仕事に戻っていった。

ジューク様、か。

メイド頭の俺への呼び名に苦笑いを浮かべる。

俺も使用人の一人なのにな。

今のメイド頭は、俺が13才の頃に雇われた人だ。

その頃には俺はこの城で働いていて…

だから、年齢は下でも、勤続年数は俺の方が上で、役職も上なのは間違いじゃない。

けれど、それだけの理由で『様』はつけない。

…出生のせいだ。

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