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プリンス×プリンセス

第22章 そういう事、ですか

ティアナ様はにこやかな笑顔を浮かべて話す。

「切りたくないけど何本か切らなきゃならなくて。切った花も勿体ないからって、小さな花瓶に活けてくれたの」

「そうですか。テリオス様が…」

大切な薔薇を切り花にした理由は分かった。

けれど…

「ええ、そうだけど…?」

俺の表情を読み取り、ティアナ様の声が不安げな色を帯びる。

「いえ、そんな大した話ではないので」

急いで笑顔を浮かべ、その場をとりなすと

「では、こちらは返しておきますね」

ティアナ様の持つトレイに手を添えた。

「お預かりします」

「…お願いしますね」

ティアナ様は首を傾けて、薄く笑った。

一礼すると、トレイを手に厨房へ向かう。

その間、自分の発言を思い返した。

大した話ではない。

そう。

確信が確証に変わっただけだ。

そして、それによって、先程の違和感の正体が掴めた…気がする。

「そういう事、ですか」

呟いた声は、自分でも驚くほど暗い声だった…。


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