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プリンス×プリンセス

第29章 男で構わない

それがあまりに意外なものすぎて、何度か瞬きをしてしまった。

「花びら…?」

真っ赤な薔薇の花びら。

この色は見覚えがある。

今日1日、ディオの胸元を彩っていた薔薇と同じ色…だ。

「何で…」

聞いたのに深い意味なんかなかった。

ただ、口をついただけの問いだったのに

「棄てるのが惜しくてな」

手のひらに残った花弁を払い落としながらの言葉は、あまりの想定外で。

「スパフラワーで愉しめばいいかと…何だ?」

ディオを凝視し過ぎたからか?

俺を見たディオが、言葉を止めて目を細めた。

少し咎めるような視線に首を振ると

「いや…ディオ、変わったな」

湯槽に浮かぶ花弁を掬うと、ディオが片方の眉を上げた。

「前は惜し気もなく棄ててたじゃないか」

なのに、お前の部屋に飾った一輪挿しは、枯れる寸前まで片付けないし。

これだって、そもそも長持ちさせようとはしてない代物で…

本来なら、式典が終わればごみ箱へ投げ入れられる物だ。

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