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プリンス×プリンセス

第31章 泣かせたりしないのに

「そうね…」

小さく頷くと、私の思いを伝えた。

私の話にジュークは目を丸くしていた。

そうよね。私だって信じられないもの。

だけど…

「分かっているの。あの人が誰を想っているのか」

フェールロコノに来て…いつからなのかしら?

いつからとかではなく、徐々に…だったのかも知れない。

「私を通して、誰を見ているのか」

あの雑誌の写真も。

私と肌を重ねているときも。

『私』を見る目とは違うから…

堪えきれず、涙が一粒こぼれて、手の甲で弾けた。

「ティアナ様…」

眉間に深い皺を寄せたまま、私に近付いたジュークが…

強い力で、私を抱き締めた。

「ジューク…?」

突然の抱擁に、戸惑いながら名前を呼べば

「私なら…」

消え入りそうな程の小さな声で囁かれた。

「え…?」

「こんな風に泣かせたりしないのに…」

「ジューク…」

「貴女がこんな辛い思いを抱えているのを放ってはおけない」

少しだけ力が緩んで、息を付いた所で

「あ…」

ジュークが顔を寄せて…唇を塞がれた。

そして…

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