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プリンス×プリンセス

第31章 泣かせたりしないのに

向かった先はジュークの自室だった。

初めて入るその部屋はとてもシンプルで…

「綺麗好きなのね」

「散らかるほどのものが無いだけです」

確かに、幼少の頃から住んでいるにしては、物が少なすぎるかも。

「ダージリンティーです。どうぞ」

白磁のティーカップで紅茶を振る舞われ、一口飲めば深いため息がこぼれた。

「美味しい…とても上手ね」

「慣れです」

簡単に言うけれど、慣れるまでにどれ程の時間を要したんだろう?

きっとこの人も、口に出せない苦労をしているのでしょうね。

「何があったのか、お訊きしてもよろしいですか?」

「……」

目を閉じて、考える。

話していいことなのかしら…。

だけどこんな話…話せるのは、この人だけかもしれない…。

「誰にも…話さないって約束してくれる…?」

目を開いてジュークを見れば、少しだけ見張った目元を柔らかく緩めた。

「では…二人だけの秘密、ですね」

秘めやかな声に、胸がとくんと高鳴る。

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