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プリンス×プリンセス

第5章 薔薇が好きだから

「ですが、育てることで大切にしたいと思う気持ちが湧くんです」

ディオチェスター王子は、何の感情も写さない目で俺を見て

「成る程な」

そう一言だけ言うと、フッと笑った。

「作りたければ作ればいいだろう」

「え!?」

あまりに容易く許可が出て、ちょっと拍子抜けしてしまうと

「ジューク。東側の区画を提供してやれ」

「は。かしこまりました」

そして、何事もなかったかの様に、書類に目を移した。

くっそぉ。『どうでもいい』って思ってるのがよく分かる態度だぜ!!

「それと、姉上の部屋の薔薇ですが、あんなに大量に飾り立てなくて結構です」

書類を捲る手がピクッと止まった。

「あれは薔薇が好きだと聞いたが?」

『あれ』!?姉上の事を『あれ』呼ばわりするなよ!!

「花を大事に思う気持ちがあるなら、一輪で充分です」

言葉に込めた俺の嫌味に気付いただろうか?

ふぅ…とため息をついたと思ったら

「…好きにしろ」

「ありがとうございます!!」

やった!!勝った!!

ディオチェスター王子に頭を下げながら、内心笑みを浮かべていた。

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