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プリンス×プリンセス

第49章 騙しあい

そして、その頃ー

控えの間を出て、エントランスへ向かおうと歩いていると、急に呼び止められた。

「ジューク、久しいな」

その声にジュークは足を止め、声の主を見つめる。

「そうですね」

笑みをうかべるジュークに、声の主―キサンタンガムの国王―は近寄ると

「久々の故郷はどうだ?」

そう言って、両手を広げてみせた。

ジュークはそんな姿に一瞬眉を寄せると、窓の外に拡がる景色に目を落とす。

故郷。

幼い頃、母と暮らした国。

それに間違いはないが…

「まだ懐かしさに浸るわけにはまいりませんから」

棒読みのような、感情のこもらない声に、国王は顎に手をかけ、したり顔を浮かべた。

「そうか…そうだな」

そして何度か頷くと、ひとつ咳払いをした。

「それはそうと、手筈はどうだ?」

「順調です」

景色から国王に視線を動かすと、ジュークはニタリと笑う。

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