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プリンス×プリンセス

第50章 尊い人

そう言われると、立ち上がる事が出来ない。

大人しく元に戻ると、彼女は微笑みを浮かべた。

どうしよう。

彼女に、全く覚えがない。

「あの…失礼ですが、あなたは…?」

覚悟を決めて質問すれば、彼女は一瞬目を丸くして…

「申し遅れまして。私はトグル王国の第一王女、グレイス・ジータ・アルテッツァです」

そう言って、スカートを摘まんで挨拶をする。

トグル王国…

グレイス王女…?

頭の中で何度か復唱して、やっと思い当たった。

グレイスって、あの子だ。

ディオが留学先で出会った女の子。

ディオに恋い焦がれて裏切られたと、シエンタが同情した、あの…

「お分かりになりましたか?」

俺の顔色を見て、グレイスは目を伏せた。

「私のためと言いつつ、シエンタのした事は褒められる事ではありません」

確か、シエンタより年下だったはず。

だけどその佇まいは、シエンタよりももっと大人びていた。

「ティアナ様も弟君にも、ご迷惑をお掛けしました」

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