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プリンス×プリンセス

第66章 湖畔の少年

それが容易に想像できたユーノスは、唇を悔しげに歪ませた。

初めて彼の姿を見たのは、俺が10才の頃。

直接話しかけるなんて出来なくて、遠巻きに見ているだけだった。

社交的とは言いがたい彼の雰囲気と、周りの大人たちが彼に対して特別待遇をしているのが相成って

『何か気に入らない奴』

そんな感情を抱いてしまった。

それ以来直接姿を見る事はなかった。

だけど、新聞や雑誌で動向を知ることは出来て…

「ふーん、来るのか…」

来なくてもいいのに。

そんな気持ちが出てしまったみたいで、グレイスの目が険しくなる。

「くれぐれも失礼のないように心がけて!」

その声が叱責めいていて、心にもやがかかる。

グレイスが彼に特別な感情を抱いているのは、昔から知ってる。

知ってはいるけど…

それを想い、頬を緩ませているのを見るのは…

単純に、面白くないんだよ!

「分かってるよ!」

苛立ちも込めて言い放つと、目的地まで走って向かった。

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