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プリンス×プリンセス

第66章 湖畔の少年

役立たずでしかなかった昔を思い出して、それを振り払おうとむきになって言い返した!

そうさ。もうあの時の俺じゃない!

それに…

「お前の頼みなんだから」

ぼそりと呟いた決意は、グレイスには届かなかったようだ。

「え?」

キョトンとして聞き返されて。

その表情に、自分の行動が恥ずかしく思えた。

「何でもない」

慌てて首を振って、熱くなった頬を隠そうとそっぽを向く。

だけど夕日に照らされた状態だから、グレイスからは顔色の判別はつかない。

ただ、急に顔をそむけたユーノスに、首を傾げるだけだった。

「ユーノス。分かっているなら…」

先を急かそうとするグレイスの言葉は

「ところで…例の人はどうなった?」

そっぽを向いたまま、少しだけ硬い口調のユーノスの声に阻まれた。

その声に少しばかり戸惑いながらも

「予定どおり」

そう答えるグレイスの目が、ほんの少しだけ柔らかく細められた。

誰を思い出しての変化なのか。

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