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プリンス×プリンセス

第78章 柔らかな温もり

もう、私を見てもくれないの…?

浮かべていた微笑みが強張る。

頬が引きつりそうになる前に、コートを手に取って

「ルークス、行きましょう」

「え?あ、お待ちを!」

私の声かけに、ルークスはお釣りを受け取って振り向いた。

出入口に向かいかけた時…

カタン、トン、トン、トン……

どこからか物音がした。

段々と近付いてくる物音と共に

「おとぅたん、どこぉ?」

少し甲高い、鼻に抜けるような声。

もしかして…

ドクン!

鼓動が激しく鳴り、物音がする方向へ顔を向けた。

カウンターの奥の、引き戸。

「ルー!こちらに来ては駄目だ!」

ジュークが声を上げるけど…

「あ…!」

カタカタと軽く揺れながら、引き戸が開いた。

その隙間から、女の子が顔を覗かせる。

「おとぅたん、いたー」

ジュークを見て、無邪気に笑う女の子。

くせ毛気味のふわふわな焦げ茶色の髪。

白い肌。

薔薇色に色付く頬。

ジュークを見て細められた瞳は、エメラルドのようにきれいで…

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