レモンスカッシュ
第3章 M/O
M side
いつでも智の存在はどこかに感じて。
だけど、ここにはいなくて。
…たぶん家にも。
居てくれてるはずがない。
気分を変えたくて、
「相葉くん。」
「んー?」
「相葉くんって、恋してるの?」
「ぶっ。」
口に含んでたビールを
噴き出しそうになってる。
相葉くんは、
「も、いきなり何!?
あっぶないなぁー。」
って言って、顔を赤くしてる。
「可愛い(笑)」
「っ!…そんな事、言わないでよ。」
少しだけ笑った相葉くんの顔は
どこか寂しげで。
「いるの?好きな人。」
「聞くー?それー。」
なんて笑いながら言ってるけど、
ちゃんと笑えてなくない?
気になったけど、
好奇心には勝てなくて。
「いいじゃん。
で、いるの?」
「…いるよ。」
「え!いるの!?」
驚いた。
そんな話を聞いた事がなかったし。
昔は、
「俺、好きな人がねー、いるの!」
ってよく話してくれてたのに。
最近はめっきりなくなった。
「どんな人?」
「絶対に叶わない人。
…素敵な人だよ。」
「気になるなぁ!
それ、俺の知ってる人なの?」
軽い気持ちで聞いた。
それが相葉くんを苦しめてた。
「…知ってる人。」
「まじか!」
ビールをぐいっと煽りながら、
「相葉くんも、幸せなんだな!」
「…じゃない。」
「え…?」
「あ…っ。
ううん!何でもない!
もう飲もう!ね?」
強引に俺のコップと
自分のコップに、溢れるほどのビールを注ぐ。
「なぁ、相葉くん。」
「もういいよ。」
「相葉くー…」
「もういいんだってば!」
突然の大きな声が、リビングに響いた。
「幸せなの!俺はこれでいいの!
…もういいんだよ。
幸せなの。俺の幸せはね、
好きな人の幸せなの。」
「でもそんなの辛いだろ?」
「そんなの分かってるよ。
痛いほど分かってるよ!」
悲痛な叫びに近い言葉は、
涙と一緒に溢れてる。
「松潤には分かんないよ…。」
その言葉は、俺の胸に深く刺さった。